畳の豆知識KNOWLEDGE
畳の利点について
大昔から日本の気候に適した生活道具(床材)としての畳は、日本人の生活、精神、環境にマッチしたたくさんの効果を与えてくれています。
畳は、生活に溶け込んでしまっているので見過されがちですが、多種多様の効果を日本人の生活にもたらしてくれています、それにエコロジーの観点からも素晴らしい生活必需品です。ごく一部ですがご紹介します。
畳の選び方
新築や増改築、リフォーム、畳替えなに、畳を選ぶ時に重要なこと。
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現物見本実際によく見て、触れて確かめる。
- 新築や増改築、リフォームによって新しい畳を入れるときは、まず現物見本をよく見て、畳全体に均一性のある硬さと適度の弾力性が感じられることや、表面に凸凹がないかなどを確かめます。
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畳床がどんな種類のものかを確かめる。
- 畳床には大きく分けて「稲わら畳床」、「稲わらサンドイッチ畳床」、「建材畳床」の3種類があります。
普段は目に見えないところですので、畳屋さんにそれぞれ特性を聞いて、使う用途や住まいの条件に合った素材を選ぶことが大切です。
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イ草の状態はどうか。
細く長いイ草で編み上りが均一で密度のある畳表になっているか。 - 畳は、床の良し悪しと、イ草の良し悪しが最も大切なポイントです。
特に畳表の良し悪しは、歩く感触や部屋の風合いを左右します。
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防虫、防カビ処理はどうか。
人体に有害な化学物質などを使用していないか。 - 畳床や畳を作る過程で防虫処理を行いますが、防虫紙や防虫糸その他使用状況を確認しておくことをおススメします。
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適正な価格の確認と、畳替えなどに要する費用も考慮が必要です。
- 畳は、種類やサイズによって価格が違います。畳を使用する住宅(木造、コンクリート造等)や敷き込む部屋の位置なども考慮して選ぶことをおススメします。
また、畳替えの際は家財の移動費用なども確かめておくとよいでしょう。
大谷畳店では、どんな家具の移動もお見積りも無料になっております。また、現物見本をご覧になりたい方、ご不明な点、あるいは、ご質問がございましたら、お気軽にご連絡ください。
畳の効能
畳はさまざまな優れた効能があるんです。その一部をご紹介します。
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集中力アップ
- 熊本で実際に中学生を対象に算数の問題を解く実験が行われました。
「熊本産イ草畳表使用の畳の部屋」と「会議室」で問題を解いてもらった結果、畳のある部屋の方が10問程度正解数多く、実験後のアンケートにも「畳の部屋」の方が良かったとの回答がありました。
この結果、会議室では落ち着かなかったが、イ草使用の畳の部屋では10分程度で静かになったとのことで、イ草使用の畳には精神を落ち着かせ集中力を高めてくれる働きがある事が実証されました。
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抗菌性
- イ草には強い抗菌性があります。北九州市立大学国際環境工学部の森田洋博士の研究でサルモネラ菌・ブドウ球菌・腸管出血性大腸菌(O-157・O-26・O-111)・バチルス菌・ミクロコッカス菌等に抗菌性を示して繁殖を抑えることが実証されております。
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浄化作用(天然の空気清浄機)
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イ草の畳は空気をきれいにしてくれます。東京大学工学部の西村肇教授の研究室により、二酸化炭素をイ草が吸着して60分で部屋の濃度を10分の1に減らす事が示されております。
また、イ草+ワラ畳床がホルムアルデヒトを吸着して部屋の空気をきれいにしてくれている可能性を研究者が指摘しています。
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吸音力&遮断力
- ワラ畳は優れた吸音・遮音性を持っており静かで優しい空間を作り出しています。条件にもよりますが、フローリングの部屋に比べて音の大きさは約半分になるといわれています。
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人の五感に優しい
- 畳は触覚や聴覚に快い材料と云えますが、視覚や臭覚のうえでも親しみやすい材料であることがはっきりしております。
京都大学の増田稔先生は人間の好ましく感じる色はYR系の色で、畳の色を色相・彩度平面で分析すると、畳の黄色がかった色相が暖かさのイメージを誘い、彩度が低く木材に近いことから、上品で他の材料と色彩的に良く調和することが指摘されています。
また、匂いについても研究された方がおられ畳の匂いは、「快い」と「自然な」の中間にあたり、嗅覚的にも畳が優しい材料であることを報告されています。
[参照資料] 敷物新聞/心地よい畳の生活/日本女子大学理学部数物科学科 南澤明子元教授資料
畳の一生
畳は、天然の素材イ草から作られています。
畳としての役目を終えると、たい肥になり農家へ・・・そして畑へと循環しています。
上の図は、稲わら畳床のリサイクルの流れを表したものです。
イ草から畳が出来るまでの流れになります。
【株分け】
暑い8月から準備が始まります。 苗床から掘り上げた、イ草の苗の中から健康な苗だけを一株一株、株分けして植え付けを待ちます。 |
【植え付け】
苗床で育った苗を11月から12月の寒い時期に本田に植え付けます。 |
【先刈り】
5月上旬ころイ草の先端を刈り取り、根元に日光が当るようにして新芽の発芽を促します。 先刈りしたあと、倒れるのを防ぐため、網をかけます。 |
【収穫作業】
6月中旬から7月中旬ころに、生育の良い充実したイ草から順番に刈り取ります。 |
【泥染め作業】
畳表独特の色と香りと光沢を持たせるために、天然染土による泥染め作業を行います。 |
【畳表の製織】
農家で一枚一枚の畳表が機械で織上げられていきます。 |
【仕上げ作業・検査・シール表示】
丁寧に品質を守るため、一枚一枚手作業で丁寧に仕上げて出荷します。 検査規格に基づく厳しい検査を経た後、様々な表示をして製品に対する責任表示を明確にしています(小さい写真)。 |
畳のポテンシャル
畳は、和室の床として用いられた伝統的な建築材料です。
住文化の中で世界に例を見ない日本独自に発達してきたもので、独特の文化を象徴するものとなっています。しかし最近は住宅建築の洋風化が一層進み、和室の存在は希薄になりつつあります。また一方では畳の良さというものも見直されつつあり、和室という住文化が日本の伝統を継続し日本人の精神形成に欠かせないものとして注目されています。
そこで改めて現代の生活、建築における畳という床材の性能(ポテンシャル)をご紹介したいと思います。
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曲げ強さ
- 畳は、その構成材料から畳床の厚さによって曲げ強さが変わります。
硬さや剛性、あるいは弾力性など、畳に要求される基本的な性能として捉えられます。
すなわち、畳の丈夫さ(強さ)を意味しています。
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硬さ
- 畳には、ある程度の弾力性と柔軟性のある硬さが必要なのです。
例えば、畳の上で転んで頭や身体を打ち付けた場合でも衝撃を吸収する柔軟性があるんです。柔道の道場は床が畳になっています。
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圧縮強さ
- 畳は、長年にわたる使用にも耐える性能でなければなりません。
人の歩行によって繰り返し踏みつけられたり、家具などによって長期間押さえつけられもします。
厚さ40cmにも重ねた稲わらをわすか5cmまで圧縮することによって生じる復元力が、稲わら畳床の弾力と耐久を生みます。
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吸放出性
- 稲わらや、イ草(畳表)は自然の資材です。
素材の特性からわずかながら湿気を吸収し、また放湿する性質があります。しかし吸湿する速度に比べ放湿する速度は遅く、畜湿する傾向があります。したがって放湿効果を上げるためには、こまめな換気必要になります。
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断熱保温性
- 稲わらには熱を伝えにくい特徴があります。
稲わらの空洞がその高い断熱性の秘密です。また、一度温かい状態になると熱を逃さない保温の役目をします。
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寸法安定性
- 畳には、敷きこんだ後に若干の寸法の変化が起こることがあります。これは畳床の膨張や収縮によって起こることが考えられますが、極端の吸放湿がない限り、隙間が空いたり畳が持ち上がったりということはまずないと言えます。
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床衝撃音遮断性
- 稲わらのたくさんの空洞に含まれる空気が、音を吸い込む吸音効果を持ちます。また、一般に遮音性は重量に比例すると言われますが、稲わら畳床の重量感がここでは長所になります。
畳の種類にもよりますが、例えばコンクリートの床に敷いた場合の「衝撃音」はかなり改善されることが分かっています。
畳の構造
畳は、表面に見える畳表と芯の部分に当たる畳床を重ねたものに、畳縁を縫い付けて出来上がります。
畳床は基本的にはワラを原料とし、そのワラを縦横に並べて糸締めして作られます。以前はワラだけで作られていましたが、さまざまな社会環境の変化や新しい建築仕様に対応するため、フォームポリスチレンやインシュレーションボードが使われるようになり、ワラ床の生産は減少傾向にあります。
また、健康志向に対応して、備長炭が入った畳床も作られています。
畳表は主原料のイ草を横糸に、麻糸を縦糸として織られたものであり、イ草の種類によっていくつかの等級に分けられます。最近ではワラやイ草の代わりに化学製品やパルプを用いたものも商品化されています。
畳縁は畳表と畳床を包み込むことによって畳を保護し、織り込まれた美しい色柄は部屋を引き立たせます。
繧繝(ウンゲン)縁 繧繝(ウンゲン)縁 繧繝(ウンゲン)縁 | 畳縁(タタミヘリ)は化学繊維、綿、麻、絹などの素材でできています。
無地のものと柄を織り込んだものの2タイプあり、畳縁によって部屋の雰囲気がガラッと変わります。最近の洋風化したインテリアにマッチするように様々な色やデザインがあり、好みや用途によって選べます。 畳縁の種類は錦織デザインの繧繝(ウンゲン)縁、大小の地紋を織り込んだ高麗縁、綿糸に光沢加工した綿縁や、無地系の縁で鈍綿・混紡の光輝縁、麻素材で茶室に使われる高宮縁、化繊系で柄を織り上げた柄縁や金糸を使ったもの、刺繍したものなどいろいろな種類があります。現在、最も広く使われているのが柄縁です。 昔は、身分によって畳縁の使用規定がありました。現在では神社仏閣などで、この名残りを見ることができます。 時代のニーズに対応して、抗菌や防虫機能を備えたものもあります。 [参照資料] 敷物新聞社より |
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稲わら畳床 | 稲わら畳床
昔ながらの天然素材。ワラを何層にも重ね合わせたもので、ワラの質、配列も仕方、均等に圧縮してあるかどうか、縫い目の間隔などにより品質が決まります。 30kg以上の稲ワラを平らに約40cmまで積み重ね、5cmの厚さまで圧縮して作るため畳ならではの耐久性、弾力性、吸放湿性、断熱・保温性、難燃性という点で一番優れています。 たくさんのワラを使用し、配列を多くし、縫い目間隔が細かいものが高級品とされています。感触が良く、表替えを繰り返しても丈夫で、天然素材であるため室内の湿度を調節する調湿機能は他の床材に比べ最も優れています。また吸音効果、防音効果を備えています。 高、中級クラスの畳表との組み合わせにより、その質感は一段と発揮されます。 |
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稲わらサンドイッチ畳床 | 稲わらサンドイッチ畳床
稲ワラの間にポリスチレンフォーム・インシュレーションボード等を挟み込んだもの。稲ワラ畳床と建材畳床の中間品と云えるでしょう。 稲ワラ畳床の特色を持ちながら軽量で、保温性に優れています。稲ワラ畳床に比べて軽くダニが寄生しにくいのが特徴です。また感触が稲ワラ畳床によく似ています。 |
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建材畳床 | 建材畳床
稲ワラを一切使用しないでポリスチレンフォームや細かいチップを圧縮したインシュレーションボードを組み合わせ縫い込んだものです。 軽量で低コスト、主に高層マンション、アパート等に多く使用されています。断熱性に優れ軽く、水を吸収しない、工業製品なので品質が安定して、重量も軽く、ダニの寄生しにくいことなどが特徴です。 床材がコンクリートの場合、保温性、断熱性に優れた建材床を使用することでコンクリートへ伝わる熱エネルギーのロスを少なくできます。 [参照資料] 株式会社和楽より |
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畳の歴史
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奈良時代(710年~)
- 現存する畳の古いものは奈良時代のもので、奈良東大寺の正倉院にある聖武天皇が使用した「御床畳(ゴショウノタタミ)」という木製の台の上に置かれ寝台として使われたものです。
これは現在の畳と同じように真薦(マコモ)を編んだムシロのようなものを5~6枚重ねて床として、表にイ草の菰(コモ)をかぶせた錦の縁をつけたものです。この台を2つ並べてベッドとしていました。
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平安時代(794年~)
- 平安時代に入って貴族の邸宅が寝殿造の建築様式となると、板敷の間に座具や寝具などとして畳が所々に置かれるようになりました。この置き畳として使われている様子は絵巻物等に描かれています。
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鎌倉時代(1192年~)& 室町時代(1392年~)
- やがて鎌倉時代から室町時代にかけて書院造が完成されると部屋の範囲に畳を敷き、真ん中を残す使い方から、部屋全体に畳を敷き詰める使い方になりました。
それまでの客をもてなす座具であった畳が、建築の床材になり始めます。
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安土桃山時代(1573年~)& 江戸時代(1603年~)
- 桃山時代から江戸時代へと移るにしたがい、書院造は茶道の発達によって茶室の工夫や手法を取り入れた数寄屋風の書院造になって行きました。茶室建築から畳はやがて町人の家に引き継がれて行きます。
畳が一般庶民のものとなったのは、江戸時代中期以降のことであり、農村においては更に遅く、明治時代になってからでした。江戸時代の長屋では、畳は長屋を借りる店子が運び込んで使ったと云われており、大家が用意しておくものではありませんでした。そのため畳の手入れをきちんとすることで長持ちさせる知恵が身に付いていったと考えられます。
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明治時代(1869年~)& 現代
- 畳干しをこまめにして、痛むのを防ぎ、表が焼けたら裏返しをして使うという習慣は戦後まで続きました。
過密化した最近の都市では干す場所もなく、住まいの洋風化により、近年の中高層マンションにおいては、畳の部屋は1室という間取りが主流になってきました。
近年、また畳の良さが見直されて来ています。